快適な住まいとするための住宅環境づくりの中で、熱の環境に関してまとめました。
屋外の気温は1年間を通して大きく変動していて、室内を快適に暮らせる温度に保つ為には断熱や空調が必要となります。
熱は、物体間に温度差があれば必ず高いところから低いところに流れるという特徴があり、その熱の伝わり方として、伝道、対流、放射の3つに分けられます。
熱伝道は、冷たいドアハンドルに触れて冷たく感じるような、固体同士(または静止した液体や気体)が触れ合って温度を伝えることです。
物によって伝わりやすさが違い、金属は温度が伝わり易いので触れたときに冷たさや熱さを感じやすくなります。
逆に柔らかい木などは熱が伝わりにくいので、触れたときにあまり冷たさや熱さを感じにくくなるのです。
外部に手に触れる物があるときは、金属の製品よりも木やプラスチックの製品の方が熱さや寒さを感じにくくなるということを覚えておきましょう。
ちょっと触れるだけならそれほど気にならない場合も多いのですが、頻繁にしっかり握る必要がある場所においては、特に注意が必要となります。
対流は、液体や気体の移動によって熱が移動することです。
一般に高い温度の気体(液体)が下のほうにあると、上昇しようとします。
吹抜の空間で1階より2階のほうが暖かい(暑い)のはこの為で、この現象をうまく利用すると風が無くても自然換気をすることが出来ます。
また、風など横方向の動きによっても熱は伝わります。
暑い日でも風が吹くと心地よさを感じたり、寒い日に風が吹くと更に寒く感じるのは、この対流によって温度が伝わりやすくなる為に起きる現象です。
放射熱は、物から物へ遠赤外線のような電磁波によって、触れずとも熱が伝えられる現象です。
熱を伝えるのは0.8から400マイクロメートルの範囲の電磁波です。
温度があるもの(絶対零度以外の状態)からは常に発生している電磁波ですが、周囲から体に当たる電磁波と体から出ていく電磁波の大きさの差が、体が感じる温度差となります。
温度が高いものからは放射熱が盛んに発生していて、焚き火などから多少離れても暖かさを感じるのはこの為です。
また床暖房のように広い面積が暖かい場合は、ストーブのように高い温度でなくても暖かさを感じることが出来ます。
これは、ストーブのように熱が体の一部に当たるのではなく体全体に当たっているからで、快適な温度環境の為には、室内でより均一な温度とすることが大切なのです。
熱伝道は物同士が触れたときに特有のもので、対流や放射は、ほとんど同時に起こっています。
また部屋の温度が同じでも、湿度の違いや風の有無でも体感温度や快適さが違ってきます。
湿度が高いと より暑く感じ、風があると より寒く感じます。
気温24.5度、湿度40パーセント、無風が快適条件といわれますが、これは着ている衣服や作業状態によって結構変わります。
衣服に関しては、最近ではクールビズやウォームビズが有名になったように、部屋着を調整することで室外と室内の温度差を少なくできるので冷暖房費用を少なくすることが出来ます。
そして、服を脱いだりする脱衣室やトイレでは寒さが より気になるという点も、快適な室内環境を作る上で重要なチェックポイントとなります。
また書斎のように静かに作業する場所と、プレイルームのような動きを伴う部屋では、適温とされる室内温度が変わります。
部屋の中でちょっと運動すると、部屋の温度は変わらないのに暑く感じることを想像すれば分かりやすいでしょう。
このように冷暖房を考える場合には、部屋の種類や用途によって最適な温度が変わってくることを考慮する必要があるのです。
熱の伝達を遮る材料としては、身近なものでは空気が一番性能がいい材料です。
一般的な住まいに使われる断熱材は、素材の中に空気(気体)を沢山含んでいることで、断熱性能が高くなっています。
熱の伝わりやすさは熱伝導率で表し、数値が小さいほうが断熱性能が高くなります。
その値は、銅が320、コンクリートが1.4程度、ガラスが0.7、木材が0.1から0.16(重い木ほど大きい傾向があります)、断熱材のグラスウールが0.04程度です。
また空気が0.02で、水が0.5ですから、湿気(細かい水滴)が多くなると熱を通しやすくなることが分かります。
湿ったタオルが乾いたタオルより 冷たさや熱さ を感じ易いのはこの為です。
住宅で熱環境を考える場合、単純に温度だけでなく、蓄熱効果を考えることも大切です。
鉄筋コンクリート等の場合、コンクリートに熱を蓄える性質によって、昼間熱せられたコンクリートが夜になっても熱が残るので、夜になっても部屋が暑く感じられることがあります。
逆に蓄熱部分が少ない木造住宅では、外気が冷えると比較的早く室内も冷えてきます。
コンクリート住宅は温まりにくいので、一番気温が高い時間帯からズレた時間に最高温度に達します。
この蓄熱という性質を利用して、冷暖房の為の蓄熱層としてコンクリートを使うこともあります。
このように住まいの構造や仕上げ材の蓄熱ということも考慮した上で、断熱計画や空調計画等を行う必要もあるのです。