快適な住まいとするための住宅環境づくりの中でも、音に関しては分かりにくい部分が多いので、始めに基礎的な事がらをまとめてみました。
難しく感じたら直接、次のページに進んでください。
音の環境
音の環境を整えるポイントは、室内での快適な響きの音響環境を実現する為の室内音響設計と、騒音や雑音を排除する騒音・振動制御に分けることが出来ます。
音は空気等の圧力が変動している状態であり、空気中を伝わる速度(音速)は毎秒340m程度です。
密度の高い物の中のほうがより速く伝わり、減衰しにくい(遠くまで伝わる)という傾向があります。
(音速は水中で1460m/s、鉄で5000m/s程度にもなります。)
音には、反射、屈折、回折、干渉するという特徴があります。
障害物が何もなければ、音は音源を中心に球面状に直線的に広がります。
音の反射は、音が壁などに当たって反射することで、壁面の素材や形状によって一部吸収されたり、乱反射や拡散が起こります。
屈折は違う材料の境界面で音の進む角度が変わることで、建物で考える場合はほとんど無視できます。
回折は壁の後に音が廻り込む現象で、低い音のほうが廻り込み易くなります。
干渉は、二つの音波がお互いに強めあったり弱めあったりする現象で、音の環境を考える場合に遭遇する最も厄介な問題でもあります。
音の強さはデシベル(dB)を使いますが、対数計算のため分かりにくい単位です。
比較の場合は、6dB上がると2倍の音の強さになるということを覚えておきましょう。
(12dB差なら4倍くらい音の強さが違い、3dB差なら1.4倍違うということになります。)
音の高さ(周波数)はヘルツ(Hz)で表し、聞こえる範囲は20Hzから20000Hzといわれています。
年を取るにつれて高い音が聞こえにくくなり、また高い音の聞こえる範囲はかなりの個人差があります。
(年を取ると8000Hzくらいまでしか聞こえなくなり、また、人によっては40000Hz位まで聞こえる場合もあるようです。)
音の高さによって感じられる音の大きさに違いがあり、周波数によって同じ大きさに聞こえる点を結んだ線を等ラウドネス曲線といいます。
耳の感度が一番高いのは4000Hz前後(アラーム音などに利用されています)で、低い方の音になると、かなりの大きさの音でないと聞き取れません。
騒音を測定する場合は、この聞こえにくさを考慮した実際の聴感に近い値である、騒音レベル(dB(A))またはホン((A))を使います。
必要とされる音が、他の音が重なることで聞こえにくくなる現象をマスキングといいます。
一番身近なのは、電車や人ごみなどにいるとき、話している人の声が聞こえにくくなる現象です。
音の高さの組み合わせによって、影響を受けやすさが違ってきます。
聞き取りなどに必要な音がより感度が高い周波数で、雑音がより感度が低い周波数なら影響が少なくなります。
騒音の中では、人の耳の感度が高い4000Hzにより近い女性の声(高い声)の方が、男性の声(低い声)より聞き取りやすいのはこの為です。
室内で発した音が室内に余韻が残る現象を残響といい、室内の残響検討の目安として音のレベルが60dB減衰するのに必要な時間を残響時間といいます。
周波数によって残響時間に差が生じるのが一般的で、一般的には低い音は長く、高い音は短くなる傾向があります。
(ただ、木造の場合は低い音が外に漏れてしまうので、逆に短くなる場合も多くなります。)
住宅の部屋の場合は、低い音で0.6秒前後、高い音で0.4秒前後が一般的な目標でしょうか。
住まいで就寝する場合に、睡眠に悪影響を与えない騒音のレベルは35dB(A)以下が目安で、40dB(A)位が上限です。
昼間では45dB(A)以下が目安で、50dB(A)が基本でしょうか。
騒音の発生源から距離が2倍離れると、騒音は1/4になります(周囲に反射する壁などが無い場合)。
建築物の遮音等級には、D値とL値があります。
これは、建物の隣接した部屋同士の壁や床の遮音性能を示す値で、D値では数値が大きいほど遮音の性能が優れていて、L値では数値が小さいほど遮音の性能が優れている事になります。
D値はテレビやステレオの音のような普通の音を、遮音できる性能を示した値で、集合住宅の隣戸間の界壁や界床でD-50が推奨標準値で、D-40が最低限必要です。
L値は床(天井)のみが対象で、子供が走リ回る足音のような衝撃音が、どれ位下階に漏れるのかという点を示した値で、集合住宅の隣戸間の界床でL-45が推奨標準値で、L-55が最低限必要です。
L値は、発生させる衝撃の種類によって、重量衝撃源(子供の飛び跳ねに相当)と軽量衝撃源(足音に相当)に分かれ、重量衝撃源の方が音が漏れやすい傾向があります。