建物各部分の方位について考えてみます。
- 神棚は北に据えて南向きが大吉、西北に据えて東南見向けるのが次いで大吉。
下を人が通るのは凶で、上に廊下があるのは凶。 - これは神様を敬う際に大事な内容ですから、神棚を付ける際には注意すべきでしょう。
- 仏壇は西北に据えて東南に向けるのが大吉、西に据えて東に向ける・北に据えて南に向けるのが吉。
- これは陽射しの当たる方向が、仏壇が見えやすくなる向きが選ばれている感じです。
光が当たると汚れも気になりますから、常にきれいに保つ=大事にするということが基本だと思われます。
照明が発達した現代では、設置場所よりも仏壇を常にきれいに大切にする、という意識が大切なのではないでしょうか。 - 床の間は西北が大吉、西・北は吉。
- これは仏間と同じです。
床の間が住宅の和室に仏間と並べる配置が多いのは、家相によるものと収まりのよさの両方から来ているのかもしれません。
南側に作ると採光上不利にもなりますから納得しやすい考え方ですが、理由としては他に見つからないことも確かなので、無理にこだわる必要はないと思われます。 - 台所は北東と南西が凶で、南東は吉ですが、他の5方位(8方位中)は中心が凶で、その両側が吉と細かく分かれます。
- これは方位が細かすぎて難しいですね。
風向きを考えると、夏の南西の南風と冬の北風でかまどの火が煽られること嫌った点や、煙が風で部屋に入って来にくい向きを考慮したものかもしれません。
現代では、コンロの火が風に煽られるということは無いですし換気扇も付いていますから、あまり神経質になる必要はなさそうです。 - 便所は北東と南西の鬼門と裏鬼門が凶で、他の6方位(8方位中)は中心が凶でその両側が吉と細かく分かれます。
- これは臭気の問題だったのでしょう。
昔は水洗便所がほとんど無かったので便所に溜まる臭気は大問題だったと考えられますから、建物内部に便所からの風(臭い)が来ない向きに便所を配置しようとすると、自ずと(風向きは地域にもよりますが、多くの日本の地域で)鬼門や裏鬼門の方向は除外されたのでしょう。
他の6方位で細かく分かれている理由は、配置には細心の注意を払いなさいという戒め的部分だったのではないでしょうか。
現在では、ほとんどの住宅が水洗便所の換気扇付きとなっているので、こだわる必要はないと思われます。
(しかし、家相を気にする人は、一番大事にする部分ともいえるので微妙な部分となります。) - 浴室は南東が吉で、他の7方位(8方位中)は中心が凶でその両側が吉と細かく分かれます。。
- これは昔はかまどと同じく火を使っていたので、風の影響を受けにくい方向を吉としたものでしょう。
南東全体が吉なのは、風呂場の湿気を早く乾燥させるため、朝から日当たりの良いところを勧めたという一面がありそうです。
これについても現在の住まいでは乾燥機や換気扇がありますから、風呂に対するこだわりによって考えた方が良いのではないでしょうか。
南東だと風呂だけで考えると快適なのですが、他の部屋の配置が厳しくなることも多くなると思われます。 - 中央の階段は大凶、西・北は吉。階段下の便所と13段の階段は凶。
- 階段の配置に関しては、別項でも書きましたが良く分かりません。
階段下の便所は臭気が2隗まで上がっていくことを嫌ったためだと思われますが、これも現在では気にする必要はないでしょう。
階段が13段だと1段あたりの高さが高く危険になるので、現在では14段以上が良いと思われます。
建築基準法でのぎりぎりの寸法が13段なので、昔の住宅には多用されましたが、体が弱い人や子供には危険な階段なので戒めた部分もあるでしょう。(13段は絞首刑のときの段数なので嫌われたという説もあります) - 窓は鬼門方向が凶。
- これは昔の隙間が多かった窓から、寒い北風を入れたくなかった為でしょう。
最近の窓は隙間風はほとんど無いので、書斎などでは直接の陽射しが無く光が安定する北窓を使うことも有効だと考えられます。
さらに換気用の小窓などについては、夏場の風通しの面からも南面との大窓と北側の小窓の組み合わせが有効ではないでしょうか。 - 押入は西側にあって東向きと北側にあって南向きが吉。
- これは南面採光に対する北面と西日除けを考えると、自ずとこの向きになります。
しかし、北面は結露しやすいので、湿気が溜まりやすい点には注意が必要でしょう。
ここまで各部分について見てきましたが、
神棚や床の間などは建て主の考え方次第で、神様を大事にしたり家相を強く意識するか否かということがポイントとなりそうです。
火や水を使う部分については、自然の環境に左右されにくい現代ではほとんど考慮する必要はないようです。
それより、居室の快適さを重視した住宅の方が良い結果を得られるでしょう。
ここで面白いのは、当時重視された部分は吉の方向と凶の方向が細かく入り込んでいることで、より慎重に決めさせようと意識していた印象があることです。
結果的に別項で述べたように、昔と今では磁北が10度も変化している可能性がある事を考えると、吉凶が入れ替わってしまっているかもしれないのです。
家相というものは100年以上昔の住まいの参考書なので、今風に作り直す必要があるのかもしれません。
必要以上に家相・風水にこだわる事は、建築費などの無駄な浪費や住まいの使いにくさにつながる可能性もあることを考慮すべきです。
快適な住まいを作る為に重要となる部分だけに限って家相・風水の考え方を適用した方が良いのではないか、と強く感じる内容がたくさん含まれているのです。