木造の断熱工事の概要と注意点について紹介します。
グラスウール厚50mmの断熱を施した部屋の熱損失は、壁+天井+床が25パーセント、窓が30パーセント、隙間風が40パーセントほどになります。(このパーセンテージは1つの実験のデータですから、条件によって割合がかなり変化します)
つまり住まいの断熱性を高める為の一番効果的な方法は気密化することで、次に窓をペアガラス等断熱性能の高い窓を使用すること、最後に断熱材の性能を上げることとなります。
気密工事
気密のみを良くしようとする場合は、気密シートを貼ります。
このとき大切な点は、天井と壁・壁と壁・壁と床など、コーナー部分の気密シートをきちんと張り込むことです。
隙間風は材料の継ぎ目から入ってきますからコーナー部分が最も重要で、なおかつ工事しにくい場所なので注意が必要なのです。
また気密のみを良くすると結露の原因となりますから、気密工事をした場合は断熱材の性能を上げることも必要となります。
また換気扇などを利用して、常時換気を行なうことが必要となります。
最近では確認申請時点で有効な換気を取ることを確認しますが、法的には居室だけを検討すれば済みます。
しかし住まい全体の結露防止のためには、その他の部分の納戸や押入などの換気や仕上材にも注意を払う必要があるのです。
現場発泡の断熱材には隙間をなくすという効果もあるので、気密を考える場合には断熱性能の追加分も含めて、これだけで済ますという方法もあります。
しかしこの場合には、床廻りの気密対策を行なう必要がでてきます。
窓廻り
窓の断熱としては、サッシ枠の断熱性能とガラス面の断熱性能の両方が必要となります。
断熱を行う場合、まずガラス部分にペアガラス等の断熱性能の高い物を使用します。
防犯ガラスは2枚のガラスの間に薄い樹脂シートがあるので、多少断熱性能が向上します。
しかし断熱性能だけを考えると、2枚の間に空気層があるペアガラスの方が有利です。
断熱性能を上げる為に熱線反射ガラスを使う場合には、光の反射が強くなりますから、周囲への影響も考慮するべきでしょう。
アルミは断熱性能が低いので、さらに窓廻りの断熱性能を向上させるには樹脂サッシや木製サッシを使用しましょう。
樹脂サッシは隙間風は少ないのですが、見た目や触ったときの質感が今ひとつ良くないので、内装に自然素材を多用している部屋では、デザイン上浮いてしまう場合もあります。
木製サッシは断熱性能や質感は良いのですが、年数が経つと木の変形で開きにくくなったり隙間が出てくる場合も多いので、定期的な調整が必要な点には注意が必要でしょう。
質感を重視するかメンテナンスフリーを重視するかによって、この2つの選択が変わってきます。
サッシの取り付け工事については、サッシ枠と他の材料がつながる部分を隙間なく作ることがポイントとなります。
断熱材
断熱材といっても、現在では色々な物がでています。
グラスウールやロックウール、スタイロフォーム、現場発泡材、吹き込み工法など色々ありますが、重要なポイントは隙間を少なく施工することです。
私が住んでいる九州の平地では、断熱性能的にはグラスウールやロックウール75mm(これは法(22条地域)対応の数字です)で十分です。
厚みを増やすよりも断熱材を隙間を少なく設置することを重視したほうが、好結果を得られます。
配管や電線部分など工事現場では断熱材を貼り難い場所がたくさん出て来ますから、その廻りの断熱材を出来るだけ隙間なく貼ることが大切なのです。
以上が断熱工事の概要ですが、一言に断熱といってもいろんな手法があります。
重要なのは設計時点では断熱と気密は一緒に考える必要があることと、結露に配慮した設計が必要ということでしょう。
雨が多い地域で気密住宅にすると結露やカビに悩まされることも多いので、特に注意が必要なのです。
実際の工事で重要なことは、隙間をいかに少なくするかということですから、現場で大きな隙間(気密住宅では小さな隙間もですが)を見つけたら、しっかり直してもらいましょう。