木造の木工事の概要と注意点について紹介します。
軸組工事
土台、柱、梁、筋かい、などの総称です。
土台
土台には、腐りにくい桧やヒバ、杉の心持材を使います。
(心材(木の芯部分)は辺材(木の周囲部分)より耐久性が高くシロアリにも強い)
近年多用されている米栂は、防腐防蟻処理剤を浸透させたものです。
(日本の栂は耐久性が高いのですが、米栂はシロアリなどに対する耐久性が低いので薬剤処理した材料を使います。)
柱
柱には、杉や桧を使います。
完成した時にも室内や屋外から見える柱には、背割り(木材は乾燥によってひびが入るので、あらかじめ柱1箇所に切込みを入れて、他の部分がひび割れしないようにする)を行ないます。
胴差・桁・梁
梁等には松、桧、杉を使います。
松は強度が大きいのですが、種類によってはシロアリの被害を受けやすいので、湿度が多い地域での使用には注意が必要です(九州では2階の梁でもシロアリ被害を受ける場合があります)。
杉は強度が若干弱いので、材寸(断面)を大きくする必要があります。
集成材
集成材は同じ大きさの無垢材より強度が大きくなりますが、これは材料のばらつきや弱い部分を分散できるためで、木材自体が強いわけではありません。
100年位使う住宅として、接着剤の耐用年数の問題が出てきます。
50年以下の使用が前提の材料といえるでしょう。
含水率
木の乾燥は、20パーセントの含水率が基本となります。
しかし杉材は乾燥しにくいので、30パーセント程度の乾燥状態で使われることもあります。
ベストは15パーセント以下といわれていますが、杉材では現実的にはかなり困難です。
含水率が多いことによる問題点は、カビが生えやすくなることと乾燥によって木が曲がってくることです。
住まいを建てて数年経てば含水率は自然と20パーセントを切って来るので、それまでに問題が出なければ大丈夫とも言えます。
最近では人工乾燥と呼ばれる方法で、含水率を減らしています。
人工乾燥を行うと木の色合いがぼけたり黒ずんだりする場合もあるので、見え掛かりの材料には人工乾燥は避けたいところです。
木の色合いなどが変わりにくい、比較的低温で行う人工乾燥などもあります。
接合金物
基本的に、使用する金物は少なくしたいところです。
木材と金物は強度や経年劣化がまったく異なるので、基本的には木の仕口で押さえたい所です。
しかし貫を使うと柱を太くする必要がありますし、板材を使っても釘を使用するので金物使用と同じ弱さもあります。
また現在の木造住宅は金物で固定することが前提となっている作りなので、通常の住まいでは金物が必要で重要なポイントとなります。
そこで金物を使用する場合は、ホールダウン金物は柱1本に1つに抑える事、込み栓で済む場合は金物より込み栓を使う事、出来れば金物にはステンレス(一般の亜鉛メッキの金物は30年程度したら錆びます、特に木造の中で使う金物は結露で濡れている場合も多いものです)を使う事、などに配慮しましょう。
このあたりは木造をよく知っている設計者なら配慮していると思われますが、デザイン重視の設計者は気が回らない場合も多いものです。
プレカットと手刻み
木の接合部分の加工については、最近ではプレカットが圧倒的に多くなっています。
プレカットで注意するポイントは、柱下部を長ホゾに出来ることと、木の向き(無垢材の柱の上下や梁の上下面には適切な方向があります、集成材なら関係ありません)を考えて加工できるところに依頼するべきです。
大工の手刻みによる仕口(柱と梁や桁、胴差の接合部分)や継手(梁や桁、胴差同士の接合部分)の加工には、大工の技術と加工場所、木材の保存場所(加工に時間がかかるので保存期間も長くなります)が必要となるのでコスト高となります。
しかし個々の木材のクセや欠点を踏まえた上で加工を行い、手刻みでないと加工できないような接合の加工も出来るので、プレカットよりしっかりした構造となる場合が多いようです。
問題は大工の技術によって、強度が大きく変わってしまうことです。
木工事のチェックポイントは、採用する加工方法や金物などを事前に打ち合わせておくことです。
工事の見積の前に決めておかないと、工事金額がかなり変わってしまいます。
実際の工事が進んでから現場でチェックするポイントは金物廻りで、きちんと釘打ちやボルト締めをしてあることをチェックしましょう。
工事途中で仮止めしたまま、本締めや釘打ちを忘れて工事を進めてしまう場合が結構あるのです。
(ただし、現場を見たときが仮止めの場合も多いので、疑問に思ったら現場の大工ではなく設計者に確認しましょう。大工に限らず職人気質の人たちは、自分の技術に自信を持っているので、現場で必要以上の指示されるとへそを曲げてしまう人も少なくありません。)