工事見積書の中の 諸経費 を見ていきましょう。
見積もりの中で一番分かりにくい(理解しにくい)のが、この諸経費ともいえます。
現実としては、施工会社の人件費や会社経費や利益分などが含まれます。
また施工会社所有の脚立や工具などの償却費や運搬費も含まれる、工事業者としての利益分です。
ここで分かりにくいといったのは、経費全ての正確な金額をここに書いている見積書がかなり少ないということです。
現実的には、大工さんによる工事の場合は工事費全体の5パーセント前後、個人の現場監督で工事費全体の10パーセント前後の経費が必要となります。
大工さんの場合は大工工事が人件費に含まれ、現場の清掃や工程管理などだけの金額になるので、かなり低い割合となりますが、監理が不十分だったり他の業者の施工ミスを見逃しがちとなります。
個人の現場監督は一人で仕事をしている工務店で、会社の運営費などがかなり少なくなるので、現場管理に必要な実質の金額となります。
ここまでは、経費が10パーセント程度なので、正確に計上しても高すぎるといわれることは少ないので、正確に計上していることが多いものです。
しかし会社が大きくなると事務員や営業マン、事務所の運営費や広告費からモデルルームの運営費まで必要となってきます。
現実的に計算すると、工事費の20パーセントを超えることも少なくありません。
その数字をそのまま掲載すると諸経費が高過ぎるといわれてしまうので、工事費の各項目の中に諸経費の高すぎると思われる金額をばら撒いて、諸経費を10パーセント程度以下に抑える場合がほとんどです。
低い場合には、3パーセントやゼロという場合もあるほどです。
この工事費の項目に分散して誤魔化していることが、諸経費が分かりにくくなる原因なのです。
諸経費を分散させる方法としては、
工事費の単価を一律上げてしまうことが一つの方法です。
たとえば経費10パーセント分を工事費に転換する為に、工事費の単価など全体的に10パーセント高くします。
工事費の手間代を高くすることも、一つの方法です。
単価を上げすぎると単価を比較して高いといわれる場合も有るので、より比較しにくい手間代部分に経費分を上乗せします。
安く手に入る材料部分に経費を載せる事も、一つの方法です。
大きいハウスメーカーや工務店などの場合は設備機器や材料を大量購入することが出来るので、他の小さい施工会社よりも購入する際の金額が安くできることも多く、通常より10パーセント以上材料費が安いことも少なくありません。
その安い材料の単価を通常の単価として計算すれば、安く入手した分を諸経費に回すことが出来ます。
施工会社の規格外の仕上を選ぶと金額が急に上がってしまう事があるのは、このあたりに原因があるようです。
いずれにしても、施工会社が健全な運営を行うためには諸経費は大切な部分です。
単純に経費の値段だけでなく、アフターサービスや施工の丁寧さ等も考慮に入れて施工会社を選ぶことも大切です。
諸経費が分かりにくくなっているのは、諸経費が高いという住宅購入者の批判をかわす為に生まれたようなものです。
そこで住まいの価格を考える場合は諸経費にこだわるよりも、工事の内容と工事費総額のバランスを考慮することがもっとも重要なのです。