大黒柱のある家は、最近の住宅の耐震性を向上する流れに沿った建物として脚光を浴びています。
しかし現在の構造強度の確保の仕方を考えると、それほど効果があるものではないのです。
現在の木造の住まいは、筋かいやボード(合板など)で構造の強度を確保しています。
これらの構造は地震が起こった際に建物が変形しにくく、形を保ったままの状態でしか強度を保てないという特徴があります。
昔の大黒柱があるような住まいでは、地震が起こると適度に変形することで地震の力を受け流し、倒壊を防いでいるのです。
そして大黒柱は、その変形を適切に抑制しつつ各部分の変形を許すという効果と、柱自体が太いことで柱の転倒(つまり住宅の倒壊)を防ぐという効果があったのです。
(細い柱は揺らせば簡単に倒れますが、太い柱は多少揺すっても(柱の幅以内の揺れなら)倒れずに元に戻るのです)
また大黒柱を謳った住まいの大黒柱は、普通の柱と構造上同じ使い方をしている場合も多いのです。
本当の大黒柱は2階や小屋裏まで一本の柱で伸びている必要があるのですが、現在の大黒柱は途中で切れていたり、他の部分と梁で有効な繋ぎ方で繋いでいなかったりするので、建物全体の強度をまとめて支えている訳ではありません。
では最近の住宅の大黒柱は、まったくの無駄なのでしょうか。
確かに住まいの強度を確保する為には、必要が無いものといえます。
しかし大黒柱は、住まいに安心感を感じる為の大きな要素となっています。
構造的には必要が無くても、大黒柱の太さが住まいに安心感を与え、安らぎや頼りがいのある住宅だと感じるのです。
木の仕上材に暖かみや気持ちよさを感じるのと同様に、大黒柱の大きさや存在感が安心や頼りがいを感じさせてくれるのです。
現在の大黒柱は、他の自然系内装仕上同様に心に訴える部分が大切だということです。
住まいの構造の強度自体は他の部分で確保していますが、構造に対する安心感という心に訴える部分として非常に効果的なのです。