続いて、住宅性能表示制度の各項目ごとにメリットとデメリットを見ていきましょう。
光・視環境に関することについては、評価というより住まいに入ってくる光の傾向を知る為の資料といえます。
住宅の性能というよりは、住宅の光に関する個性を示すものといえるので、性能表示には関係が薄いという点がデメリットでしょうか。
他の項目の性能を踏まえた上で、住宅の光環境の傾向を考察している項目などがあれば有効といえますが、この項目だけでは漠然とした判断しか出来ません。
しかも、光の環境は各部屋ごとに要求される傾向が異なるはずです。
(書斎は北窓、居間は南窓が基本となります)
そのような各部屋ごとの評価もないので、独立した項目とするには意味が薄い項目といえるでしょう。
将来もう少し詳しい評価基準を作るために、項目を確保していることが目的なのではないか とも思えます。
メリットは大まかな住まいの光環境の傾向が分かることです。
デメリットは評価になっていないという点です。
単なる計算で終わってしまっているので、評価というには程遠い内容なのです。
音環境に関することについては、開口部分の評価を行なっています。
オプション(任意)項目ですが、一番の弱点である開口部分についてのみの評価です。
メリットは、開口部分の遮音性能を確認できることです。
各方位ごとに評価を行なうので、騒音がやってくる方向について重点的に評価できる事もメリットとなります。
デメリットは、壁自体や換気扇の開口などについての評価がないことです。
本格的な遮音については評価できない作りになっています。
つまり、あえて評価に含める必要性が薄い項目である点が最大の弱点といえるでしょう。
断熱性能を上げる為に気密サッシや二重窓とした際に、付属的に評価されることが多くなりそうな内容と言えます。
メリットは軽い遮音効果に限っては評価できることでしょう。
デメリットは、遮音性能としては中途半端な内容だということです。
もともと共同住宅の界壁や界床の遮音性能を判定することを目的とした項目なので、戸建住宅に対する内容としては半端な内容に終わってしまったようです。
高齢者等への配慮に関することについては、車椅子を使用するか否かで必要な評価の等級が変わってきます。
車椅子が必要ない状態であれば、等級3程度でも十分といえます。
最高の5等級がハートビルなどのバリアフリーに関する基準を手本にしているレベルといえそうです。
それ以下の等級を住宅に適したレベルまで緩和しているという内容となっています。
基本的なバリアフリーに関する項目に関しては、確実な評価が出来るというのがメリットです。
しかし、個人の住宅を考える場合、色々な人が使い易いことよりも、実際に住む人の不都合部分に合わせた対策を行う方が効率が高くなります。
住まいの床面積は限られてくるので、個人に合わせたバリアフリー対策を行なうことが空間を効率よく使うために重要なのですが、これについては評価が難しいのです。
この、応用が利かない部分がデメリットといえます。
メリットは一定のバリアフリー対策を評価できることですが、個人に合わせたバリアフリーの内容は評価できない点がデメリットです。
ここは等級にこだわるより、現実的に使い易いバリアフリーを重視するべきである項目といえるでしょう。
防犯に関することについては、実際の侵入行為に対して防衛することを中心に評価しています。
メリットは、侵入しようとする行為に対しては、小さな窓についても しっかり対策を行なうので、確実な防御効果を評価できることです。
しかし、侵入しにくい状態を作ることについては評価を行なっていません。
センサーライトや見晴らしの良さなど、侵入行為自体を防ぐ心理的防衛について評価していない点がデメリットといえます。
侵入しようとした時点で、ガラスなどの開口部分が損傷してしまいます。
そうなると、防犯の保険があっても手続きなどの手間が掛かります。
さらに保険が効かない部分や保険の金額を越えた部分については、手出しの損害になってしまうのです。
侵入行為自体を思いとどまらせることが出来れば、この損害についても防げることになります。
メリットは、実際の侵入行為を防ぐことを確実に評価できることです。
デメリットは、侵入を未然に防ぐ方法についての評価が出来ないことです。
侵入されようとした時点で損害が出るのですが、それを防ぐ事に対する評価がない点が弱点といえるでしょう。
住宅性能表示制度のメリットは、数値化や評価をしやすい項目については ほぼ確実な評価を行なうことが出来ることです。
デメリットは、数値化できない内容や違う解決方法に対する評価が出来ない点にあります。
つまり、規格に外れるけれども良い部分に対する評価がまったく出来ない点が最大の欠点なのです。
住まいの確実な工事を確保する為には、住宅性能表示制度を利用することはメリットが大きいのです。
しかし、等級で住宅の性能すべてが判断できる訳ではないので、等級にこだわりすぎないことが住宅性能表示制度を利用する際のポイントといえるのです。